英語茶房の 英語小話 English footnote

英語茶房の 英語小話 English footnote
英和辞書で「危険」をひくと、たくさん英語が出てきます。
danger, hazard, risk などなど。
一番おなじみは danger です。でも技術英語では danger はあまり登場しません。
以前「危険予知訓練」に関する文献を翻訳しました。私がSFファンだからといって「これは超能力か」と思ったわけではありません。調べてみると、工場などで事故や災害を未然に防ぐため危険意識を高める訓練として開発されたもので、KYT (Kiken Yochi Training)という略称でも知られている、とのこと。QCサークルなどと同じく、職場の改善は日本の十八番なのでしょうね。
ではこの場合の「危険」は何か。まさか「あと1時間後にこの機械が故障して事故が起きる」のを予知するわけではないので、「この機械をこのように使っていると、思わぬ怪我をする」と予測する、いわゆる「危険性に対する感受性」を高める訓練で、つまりは「危険要素の予知」ということで、hazard でした。
hazard は「危険を引き起こす原因」「危険要因」などと英和辞書にはあり、「危険」そのものよりも「その危険を引き起こすもの」という意味があります。
だから「ハザードマップ」なんですね。ハザードマップとは、例えば「ガスが噴出している場所」などのように実際に危険がある場所を示すわけでなく、「もし災害が起きたら、そこが危ない場所になりますよ」という場所を示す地図なわけです。合点がいきました。
health hazard も、例えば「殺虫剤」がその一例。殺虫剤そのものは、もしそこにあっても直接危険だとは言えません。でも体内に取り込んだりしたら、生命に危険が及びます。漂白剤や接着剤もそう。埃なども health hazard になります(大量に埃を吸い込むと肺がやられる)。
もっとも hazard, risk, danger など英英辞書で定義を調べてみると、正直いってよく見分けがつきません。あまり深く考えず、hazard は「危険要因」、risk は「リスク」、danger はそれ以外の一般的な危険、と覚えておくのがいいのではないか、と思ってしまいます。
ただ「リスク」も曲者で、一体「リスク」の何が危険か。Wikipedia によると「ある行動に伴って(あるいは行動しないことによって)、危険に遭う可能性や損をする可能性を意味する概念」となっています。簡単に言うと、「何か起こったとき、どのくらい損をするかどうか」ということのようです。
例えば「水商売(ここでは飲食店としましょう)は危険な仕事です」と言った場合、刑事ドラマのような本当に危ない目に陥るような水商売は別にして、普通は「失敗する可能性が高く、失敗したら大きな借金を抱え込む」という「危険」を考えます。だから Running a restaurant is a risky business. が適切かと思います。
danger は一般的な意味での「生命が危うい、怪我するかもしれない、死ぬかも知れないような危険」なので、
There is a lot of danger in that area of town. Thieves and thugs are wandering around. あるいは There are a lot of holes on the road. などのような場合の危険は danger で良いのですね。
つまりは danger は「今そこにある危機」が danger。どこかで聞いたような言葉ですね。そう、ハリソン・フォード主演の映画でした。原題は、Clear and Present Danger です。これは「明白な当面の危機」とか「明白かつ現在の危機」とか訳されています。アメリカの司法用語で、簡単にいうと「明白かつ現在の危機があれば、市民の権利を制限できる」というようなもの。それほど大きな危機ということなのでしょう。
しかし映画のコピーとして「今そこにある危機」は名訳だと思います。
正式な定義はおいといて、一般的に danger は私の感覚では「今そこにある危機」のようなものが danger ではないか、と思います。
私も勉強になりました。英語に関しては「危険」には「危険がいっぱい」ですね。
危険がいっぱい
2011年7月2日土曜日